介護技術「ボディメカニクス」の基本|腰を痛めないための8つの原則を介護課長が解説

介助中

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 「いつか自分も腰を痛めるんじゃないか…」

 介護の仕事をする上で、腰痛は誰にとっても他人事ではありません。

 実際に、多くの介護職が腰に不安を抱えながら、日々の業務に奮闘しているのが現実です。

 私が15年間、一度も腰を痛めることなくキャリアを続けてこられたのも、そして多くの後輩に「腰を壊さずに長く働いてほしい」と指導してきたのも、この「ボディメカニクス」という基本技術があったからです。

 ボディメカニクスは、根性や体力に頼るものではありません。

 最小限の力で、安全・安楽なケアを実践するための、科学的な根拠に基づいた専門技術です。

 この記事で、あなたと利用者様を共に守る一生モノの技術を、是非身につけてください。

目次

ボディメカニクスとは?何故介護福祉士に必須の技術なのか

おじいちゃんに話しかける介護士

 ボディメカニクスとは、人間の正常な運動機能や力学的(メカニクス)な相互関係を利用し、骨や筋肉、関節への負担を軽減するための技術体系です。

 難しく聞こえるかもしれませんが、要は「人体の構造上、最も効率的で、身体に無理のない動き方」の原理原則だと考えてください。

 この技術が何故必須なのか。

 それは、介護職自身の腰痛予防のためだけではありません。無理な力を使わないケアは、利用者様の身体的な苦痛や不安感を軽減し、より安全で快適な介助に繋がります。

 ボディメカニクスを実践することは、自分と相手の双方を守る、プロの介護技術の根幹なのです。

腰を守り、力を効率的に使うための8つの原則

おばあちゃんを介助する介護士

 それでは、ボディメカニクスの基本となる8つの原則を、「各原則の説明」「実践編」に分けて解説していきます。

 一つひとつを意識するだけで、あなたの身体への負担は劇的に変わるはずです。

原則①:支持基底面積(しじきていめんせき)を広く保つ

 介助の基本は、まず自分自身の身体を安定させることです。

 カメラの三脚やピラミッドをイメージしてください。土台が広いほど、上は安定します。

 介助を始める前には、必ず肩幅かそれ以上に足を開く癖をつけましょう。

 たったこれだけで、ふらつかなくなり、どっしりと安定したケアができるようになります。

原則②:重心を低くする

 お相撲さんの低い姿勢を思い浮かべると分かりやすいでしょう。

 高い位置から力を加えるより、重心を落とした方が、少ない力で大きなパワーを発揮できます。

 ポイントは、腰を曲げて屈むのではなく、膝をしっかり曲げて腰を落とすこと。これにより、腰への負担を直接的に避け、太ももやお尻の力強い筋肉を有効に使うことができます。

原則③:対象に身体を近づける

 重い荷物を持つ時、身体から反して持つより、身体に引き寄せて持つ方が楽ですよね。

 それと同じで、介助する相手と自分の間に距離があると、その分だけ腕や腰にかかる負担が増してしまいます。

 勇気を持って一歩踏み込み、相手と自分の体の重心を近づけることで、力の伝導効率は驚くほど高まります。

原則④:大きな筋群を使う

 腕の力だけで相手を持ち上げようとするのは、腰痛の元です。

 意識すべきは、腕や指先といった小さな筋肉ではなく、足や太もも、お尻、背中といった身体の大きな筋肉(大きな筋群)を使うこと。

 「腕を持ち上げる」のではなく、「身体全体で立ち上がる」という意識が重要です。

 床の荷物を拾う時の、スクワットのような動きをイメージしてください。

原則⑤:相手の身体を小さくまとめる

 動かす相手の身体が広がっていると、ベッドとの摩擦面が大きくなり、動かす際の「ブレーキ」になってしまいます。

 介助の前に、相手の方に腕を胸の前で組んでもらったり、両膝を立ててもらったり、しましょう。

 この「身体を小さくまとめてもらう」一手間が、摩擦抵抗を劇的に減らし、結果として双方の負担を大きく軽減します。

原則⑥:てこの原理を活用する

 シーソーや栓抜きのように、「支点・力点・作用点」の関係をうまく利用すれば、何倍もの力を生み出せます。

 これが「てこの原理」です。

 例えば、相手の膝や肩、お尻などを支点として意識し、そこを起点に身体を回転させるように介助すると、腕力に頼らなくてもスムーズに身体を動かすことができます。

 「どこを支点にすれば楽に動かせるか?」と考える癖をつけましょう。

原則⑦:身体を捻らず、足先から動く

 上半身だけを捻る動きは、腰の骨や筋肉に非常に大きな負担をかける最も危険な動作の一つです。

 方向転換する際は、必ず移動したい方向に自分のつま先と膝を向け、身体全体を一つのユニットとして動かしてください。

 方向転換は腰で行うのではなく、足のステップで行う。これを徹底するだけで、ぎっくり腰のリスクを歩幅に減らせます。

原則⑧:「押す」より「引く」

 腕の力だけで前方に「押す」動作は、肩や腰に負担が集中しがちです。

 一方、自分の体重を後ろに移動させながら身体全体で「引く」動作は、自分の体重を有効活用でき、下半身や体幹の力を使えるため、はるかに楽でパワフルです。

 例えば、ベッドの上で利用者様を上方に移動させる時、押すのではなく、ベッドの頭側に回って身体を引く方が、効率的に力を伝えられます。

【実践編】移乗・体位変換でボディメカニクスを活かす具体例

車椅子に座っているおばちゃんに話しかける介護士

 理論を理解したところで、実際にケア場面でどう活かすのかを見ていきましょう。

ベッドから車椅子への移乗介助

 ベッド上で、利用者様には腕を組み、膝を立てて身体を小さくまとめます(原則⑤)。

 お尻を起点にし、肩、膝を支え側臥位に移行します(原則⑥)。

 同じようにお尻(支点)を起点にし、そのまま足を下ろし、下方に力を加えつつ(力点)空いている片方の手は利用者様の肩から首の間に入れ(力点及び作用点)、振り子の原理で端座位へ移行します(原則⑥)。

 両足を広げ(原則①)、膝を曲げて重心を落とし(原則②)、利用者様の身体に密着します(原則③)。

 そして、自分の身体を捻らず(原則⑦)、足の力(大きな筋群)を使い(原則④)、体重移動でゆっくりと立ち上がります。

 この一連の動作に、8原則の多くが凝縮されています。

ベッド上での上方移動

 利用者様の膝を立ててもらい、身体を小さくまとめます(原則⑤)。ベッドの高さを自分の腰の高さに合わせ、重心を低くし(原則②)、相手に身体を近づけます(原則③)。

 そして、腕の力だけで引くのではなく、自分の身体を後方にスライドさせるように体重移動しながら、水平に移動させます(原則⑧)。

技術を補助するお役立ちアイテムと職場選び

腰椎ベルトを着けている介護士

 ただし技術を身につけても、腰への負担がゼロになるわけではありません。

 自分を守るための+αの工夫と、環境選びも非常に重要です。

あなたの腰を守るための「神アイテム」

 腰に少しでも不安がある方は、腰部保護ベルト(コルセット)を着用するだけで、介助時の安心感が全く違います。

 また、ベッド上の体位変換では、滑りやすい素材でできたスライディングシートを活用すれば、摩擦抵抗が激減し、驚くほど少ない力で移動が可能です。

 更には、より深く学びたい方には、図解でわかりやすく解説されている『根拠からわかる介護技術』のような専門書で、知識を再確認することをおすすめします。

「無理な介護」をさせない職場を選ぶ勇気

 最も大切なのは、ボディメカニクスを実践できる環境で働くことです。

 人員不足から一人で危険な移乗をさせられたり、スタッフの安全教育を軽視していたりする職場は、残念ながら今も存在します。

 あなたの身体は、介護職として長く働くための何よりの資本です。

 もし今の職場に危険を感じるなら、スタッフの安全教育に力を入れている優良な法人へ転職するという選択は、あなたのキャリアを守るための懸命な判断です。

 マイナビ介護職のような専門エージェントに相談すれば、そうしたホワイトな職場の内部情報も得られます。

まとめ:ボディメカニクスは、あなたと利用者様を守る一生モノの技術

笑い合う介護士

 ボディメカニクスは、単なる腰痛予防の技術ではありません。

 それは、ケアの質と安全性を高め、何よりも、あなたが介護職という素晴らしい仕事を、心身ともに健康な状態で長く続けているために不可欠な、一生モノの専門技術です。

 是非、明日からの解除で、8つの原則のうち一つでも意識してみてください。

 その小さな積み重ねが、5年後、10年後のあなたの身体を、そしてキャリアを守ることに繋がります。

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